四十代税理士日常日記

備忘を兼ねた日記です。内容は私見です

選挙ビラを読んで一人で怒っていた話

 ありがたいことに、去年書いた下記のブログへのアクセス数がここ数日増えています。

 

www.nekomage.world

 

もうすぐ統一地方選だからでしょうね。

どおりで最近駅前に立ってる人とかポストに入れられてるビラとかが多いわけだ。。。

 

そういえば先日、ポストに入っていたビラを見ていたら、消費税増税反対を唱える地方議員のものがありました。

反対でも賛成でも、主張は様々で結構なのですが、その内容が、明らかに住民の利益よりも自分たちの主張を優先したものでちょっと悲しくなって一人で怒ってしまった。

 

チラシやビラは、正直言ってゴミだけど、ポストに入っていたものはしっかり読んで、住民を尊重して、しっかり守ってくださるような方を選挙で選びたいと改めて切実に思ったできごとだったので書き残します。

 

(以下、個人が特定できないようフェイク有)

その方の主張はざっくりいうと、

 

1)事業者の消費税納税額が1.25倍になる。売上2,000万円の製造業の事業者が簡易課税制度を使った場合、8%のときは48万円の納税だったのが10%になると60万円になってしまう。

2)現時点で増税・軽減税率の対応を行っていない事業者が9割もいる

3)レジや会計システムの改修に金がかかり、事業者は困っている

4)それを解決する一番の方法は、増税反対の声を上げることである

 

というものでした。

4)を見たときは変な声出た・・・

 

2)と3)は現状認識としてはおっしゃるとおりだと思います。

でも、議員がこの困った現状を把握した上で、単に消費税増税反対のネタに利用するだけなのはあまりにお粗末ではないでしょうか?

本当に住民の生活のことを思うのであれば、反対の主張をしながらも、

・対応を行っていない人のために国税庁の軽減税率説明会を案内する

・軽減税率対策の補助金制度を紹介する

など、できるだけ住民が困らないように手助けをするべきでは??

それがないと住民の深刻な悩みを政争の具に利用しているだけのようにしか思えません。

 

また、1)は巧妙にミスリードを誘っていますよね。

確かに消費税納税額は1.25倍になるでしょう。納税額はね。だからウソは言っていない。

しかし事業者の手元に残るお金については違う。

だって、売上にかかる消費税は、お客さんに請求しますよね?

請求したものを納税するだけなので、事業者の懐は痛まないはずです。(もちろん、入金タイミングと納税タイミングがずれるので資金繰りの管理はきちんとしなければいけませんが)簡易課税の場合はむしろ得する可能性だってある(後述します)。

それを、事業者が損するという例に出してくるところに非常に違和感があります。

 

そりゃもちろん、増税分の消費税をお客さんに請求できない、といった問題が起こることはあるでしょう。

でもそれは、消費税の増税のせいではありません。国はちゃんと、消費税の転嫁拒否を禁ずる法律を定めています。

それなのに請求できないのは客が法令違反をしているせいです。

論点を混ぜてしまうとぼやけてしまって結局何も解決しなくなってしまいますので、

それについては増税の問題とは切り離し、

法令違反として正しく批判する必要があると考えます。

 

批判と同時に、相談窓口を案内するとか、議員ができることはいくらでもある。

www.jftc.go.jp

 

そして、簡易課税制度を採用している事業者は、増税によってむしろ手残りは増えて得するケースも多いです。

 

簡易課税制度というのは、簡単に言うと

一定規模以下の事業者の負担に配慮して、

消費税の納税額を、単純に

「課税売上にかかる消費税 ー 課税売上にかかる消費税 × 一定割合」

で計算していいですよ。という制度です。

(本当は、「課税売上にかかる消費税 - 課税仕入・経費にかかる消費税」を個別に全部計算する必要がある)

www.nta.go.jp

 

個別に計算するのが大変だから簡易課税を採用している事業者もいますが、

個別に計算した結果よりも簡易課税を採用した結果のほうが納税額が少ないから簡易課税を採用しているという事業者も多いです。

 

例えば、課税売上が2,000万円で課税仕入・経費が1,000万円の製造業の事業者の場合を想定します。

<原則どおり計算した場合>

お客さんに請求する消費税額は、8%のときは160万円、10%になると200万円になり、

仕入・経費にかかった消費税額は、8%のときは80万円、10%になると100万円。

 

納税額は、8%のときは160-80=80万円、10%になると200-100=100万円

で、これは、手元に残った消費税をそのまま納めているということになります。

 

<簡易課税で計算した場合>

製造業の場合は、簡易課税の計算上は課税売上にかかる消費税の「70%」を課税仕入・経費にかかった消費税とみなして計算することになっています。

 

納税額は、

8%のときは 160万円 - 160万円×70% =48万円

10%のときは、 200万円 - 200万円×70% = 60万円

 

になります。

先ほど原則どおりの計算で算出した手元に残った消費税との差額を出してみると、

8%のときは 80万円 - 48万円 = 32万円

10%のときは 100万円 - 60万円 =40万円

となります。

手元に残った消費税と納付した消費税の差額は事業主のものになります。(事業の利益として、所得税又は法人税は課税されます)

つまり、10%になった後のほうがトクするということです。

 

これを増税の弊害としてしまうのは悪手

・・・・というか、住民が消費税の制度を詳しく知らないと思って舐めて、ワザとやっているとしか思えません。

 

舐める奴が一番ダメだし許せないという思いが一番大きいですが、

こうやって舐められてしまうのは、消費税の制度を周知できていない国税当局や我々税理士の責任でもあり反省することしきりでありますし、

住民を舐めるような奴を議員に選んでしまった我々住民の責任でもあります。

 

地方議員選挙はよくわからないし、関心が薄くなりがちですが、一番身近な存在でもありますのでしっかり考えて選ぶ必要があると改めて思いました。

 

 (注)私は消費税増税に反対すること自体がダメだとは思っていません。現実的に正しく反対してほしいという話です。私も仕事だから対応してますが軽減税率には内心反対・・・

 

特に首長は影響がでかすぎる。

耳障りのいい、変革!身を切る改革!というようなものに流されず、

また、年齢性別多選新人などの二次的な外的要素は横においておいて、

本当に地域のことを考えている、地域のための政治を実現できるのは誰か?

というのをしっかりと考えたいと思います。